はじめに
先日、VR映像について記事を読んでいたら、「スペースバルーン」という撮影方法があることを知りました。(リンク先はASCIIさんのニュース記事です。)
動画を見てみたところ、なんと宇宙の映像を360°で見ることができる…!(驚)
どうやって撮っているんだろう?と思い、調べてみたところ、とてもユニークな撮影方法だったので、簡単にご紹介させていただきます。
「スペースバルーン」とは
その名の通り、カメラを風船(気球)に括り付け、宇宙まで飛ばして撮影する技法のことを指します。
風船(気球)が成層圏に達して破裂すると、括りつけていたカメラが地表に戻ってくるため、回収して映像/写真を見ることができるという仕組みです。
気象観測ではなく撮影が目的であることがポイントで、カメラを回収するために落下地点を把握する必要があり、GPS発信機の搭載が必須です。
スペースバルーン撮影とカメラ
スペースバルーン撮影に使われるカメラには、いくつか条件があるそうです。
まずは動作時間が長いもの。(滞空時間が数時間に及ぶこともあります。上空での大切な撮影シーンを逃さず撮影できるだけの連続撮影時間は必要です。)
それから、途中で電源が落ちてもデータが失われないもの。写真の場合は、自動で撮影できるもの、という条件も必須です。
カメラの重さや、耐久性、画質に関しては、目的や予算に応じてコーディネイト可能ですが、やはり、高画質カメラで撮影された宇宙の映像は美しく、多くの人がこのために、日夜試行錯誤を重ねています。
(参考記事:岩谷圭介さんHP「ふうせん宇宙撮影」内「スペースバルーンで使用できる10種類のカメラ」)
「スペースバルーン」のはじまり
風船による高度からの撮影で、最も古い取り組みは、2006年の9月9日(11年前!)、ケンブリッジ大学の学生によるもの。気球にカメラをつけて撮影する方法は、個人でもチャレンジできるということで、以後、欧米で徐々に広がっていき、現在では世界大会が開催されるほどになりました。
スペースバルーンの世界大会「Global Space Balloon Challenge」
(ちなみに今年度の開催は、日食に合わせて8月頃になるそうです。夏空を見上げると、カメラが搭載された気球が見えるかも??)
この「Grobal Space Balloon Challenge」に参加する日本の団体は3組!(意外とポピュラーだったのですね!)
今まで知らなかったコアな世界です…。
国内の事例
日本でのスペースバルーン撮影は、TBS番組『飛び出せ!科学くん』(2009年6月9日)で放送された、明星電気によって実施されたものが最初だと言われています。
次いで、NHKで放送された『宇宙の渚』という番組では、JAXA大気球に搭載した全天球カメラで宇宙映像の撮影が行われました。
また、岩谷圭介さんの開発した「ふうせん宇宙撮影」という独自の技術では、高度48kmからの撮影に成功しています。
(岩谷圭介さんのホームページ:「ふうせん宇宙撮影」より、2014年7月20日の飛行動画)
スペースバルーン撮影の難しさ
スペースバルーン撮影は、飛行高度や撮影イメージのシミュレートに加えて、回収地点の見極めも重要な技術の一つです。
日本は海に囲まれているため、カメラが戻ってくるときに海没する可能性が極めて高く、大陸での実施に比べてハードルが高いと言われています。
さらに、国土における森林や山岳の占める面積も多く、「狙った場所に落とす」技術が極めて大切になってきます。
また、特殊な撮影技法のため、航空法や電波法など、法律面での制約も多く、撮影を行う場合には、事前に申請をする必要があります。
スペースバルーン×360°映像へのチャレンジ
宇宙の映像を360°で撮影できたら、宇宙旅行の気分を味わえるのでは…。
360°カメラが普及してきた現在、そんな夢に向かって、全天周撮影に取り組んでいる団体もあります。
冒頭のリンク先記事で紹介した、名古屋大学宇宙開発チームNAFTという団体では、スペースバルーンという技法を使って、高解像度で美しい全天周映像の撮影にチャレンジしています。
(NAFT「Space Walk!」2016年6月18日の飛行動画)
360°で撮影された映像を、ヘッドマウントディスプレイで楽しむ、そんなVRならではの宇宙旅行が、体験できる日も近いかもしれません。
感想
今回、スペースバルーン撮影について調べるうちに、「宇宙を撮影してみたい!」というロマンティックな目標に向かって、様々な撮影(+飛行)技術が 開発されていることに嬉しい驚きがありました。
カメラの機能や演出方法に習熟し、思い通りに使いこなすのも「技術」である一方、カメラ自体の可能性を広げていくような装置を作る「技術」があることにも気づかせていただきました。
360°の映像が、個人でも撮影・公開できるようになってきたように、映像で表現できることには、まだまだ可能性があります。そういった可能性を追及し、活用していくためには、多くの技術や演出のチャレンジについて、興味をもって調べていく必要があるな、と改めて感じました。
そして、スペースバルーンの世界大会「Global Space Balloon Challenge」については、今後もウォッチしていきたいと思っています!笑
(担当:田中)